伝統鍼灸の一端で

先月末、広島で行われた日本伝統鍼灸学会学術大会に参加して参りました。
この会名の“伝統”は、古典由来の東洋医学を意味しています。
それとは別に、今年の学術大会では師弟という意味の“伝統”を取り上げた講演もいくつかありました。
思えば最近、後者の“伝統”について考えることが多い気がします。

師の背中は大きく遠かった!

一番大きなきっかけは師匠の実技講習会に参加したことです。
コロナ禍となってから開催されていなかったので、数年ぶりです。
師匠とお会いして話す機会は定期的にあったとは言え、実際に鍼を持って教わるのは別格。
この間の自分の成長を見せたい気持ちもありましたが、それ以上に師匠の進化を目の当たりにしました。
“伝統”を紡ぐのに重要な、追うべき師の背中のありがたさを改めて感じます。

臨床と教育は両輪のようなもの

久しぶりに講義を担当したことも関係してそうです。
しかも、今までは同世代の仲間と手分けして講義を受け持っていたのですが、今年度からは1人でコースの最初から最後まで任せてもらえました。
今まで以上の責任感を持ちつつ準備をしてみると、毎日繰り返している治療法でも再確認や新発見がありました。
以前、伝統工芸の本で「弟子をとるつもりはなかったけど、いざ弟子ができると学ぶことがある」という職人さんの言葉を読んだことがあります。
後進を育てることが自分の成長にもつながる、実に“伝統”らしい好循環を経験することができました。

“伝統”を磨いていくために

僕自身は弟子を名乗らせてもらって十年以上経ちますし、師弟関係を前提に鍼灸師をやってきました。
ただ、今年は上記のように再考するきっかけが何回か訪れると、色々と違ったものも見えてきます。
つながりの中で“伝統”を更に磨いていくよう、改めて決意する良い機会となりました!