元気を活かす東洋医学
先月末、日本伝統鍼灸学会の学術大会が行われました。
僕も『養生訓』という江戸時代の健康書についての研究を発表してきました。
この本については今までも何回か発表してきましたが、実を言えば今回の話のための地ならしでもあったんです。
一番言いたかった部分をやっと発表できたので、このブログでも簡単に紹介します。
江戸時代の「元気」はどんな意味?
『養生訓』の要点を物凄く簡単に書くと「元気を大切にする」ということです。
今でも「元気」は日常で使われる言葉なので何となくわかった気になりますよね。
しかし、「江戸時代でも元気は同じ意味?」という疑問が今回の発表の内容でした。
結論としては、現代とは少し違った意味で「元気」という言葉を使っていたんです。
これを説明するには少し気の理論についての紹介が必要です。
昔ながらの考えでは、気の働きは四季に合わせて生長収蔵の4つあるとしています。
この中で春の働きである生のことを、『易経』という古典に由来して「元の徳」と呼ぶことがあります。
『養生訓』の著者が「元気」と呼んでいるのは、この「元の徳」を大事に思ってるからなんです。
春の働きで活き活きと!
春は草木が芽吹き、動物は活発になるなど、万物が活き活きとする季節です。
「元の徳」は気のそんな働きや性質を表しているんですね。
東洋医学では万物は気から成ると考えるので、万物の一部である人体も気でありますし「元の徳」を備えています。
つまり人の「元気」を活かすと、人体を生む(代謝する)ことで維持し、支障なく動けると言えるわけです。
こういった理論を踏まえて、「元気」を上手に使う生活法をいくつも紹介しているのが『養生訓』なんです。
時代は違えど現代日本でも使える知恵もあるので、現代語訳を読んでみるのもお勧めです!
「元気」は東洋医学らしい言葉
元気は古くからある言葉なので様々な解釈があります。
今回は僕が考察する「『養生訓』という本での元気」を紹介してみました。
元気は現代の日常でもよく聞きますが、気の理論に則ったとても東洋医学らしい言葉だったんです。
慣れ親しんだ言葉の背景に、東洋医学の雰囲気を少しでも感じていただけたでしょうか?