お風呂の勘違い(2)

前回の記事ではお風呂と湯冷めについて書きました。
[関連記事:お風呂の勘違い(1)
これを読んで「江戸時代と違って今は家が温かくて湯冷めしないのでは?」と思っている方もいるかもしれません。
しかし、現代のお風呂の方が湯冷めしやすい部分もあるんです。

江戸時代と今のお風呂の違い

お風呂は日本の文化と言われることがありますね。
数年前にはお風呂の漫画が映画化して話題になりました。
(余談ですがあの作品に鍼灸が登場しています!)
お風呂が日本の伝統的な文化なのは間違いないんだと思います。
ただ昔と今で大きく違う部分が一つ。
今は各家庭にお風呂が備わっているということです。

会長がよく言っていることがあります。
昔は風呂屋まで歩かなければならないから体調が良い時しか入浴しなかったはず、ということです。
今は各家庭にお風呂がついているので、体調が万全でなくてもちょっと頑張れば入浴できちゃいますよね。
しかし、そういう時は体温調整機能も鈍っているものです。
元気な時よりも格段に湯冷めするリスクが増してしまいます。
風邪の治りかけにサッパリしようとお風呂に入ってぶり返す、そんな経験がある人もいるのではないでしょうか?

江戸時代の方が湯冷め対策をしていた!?

もう一つ、江戸の文化の本を読んでいて気付いたことがあります。
昔の風呂屋の浴室は見えないほど湯気で蒸していたそうです。
つまり浴室自体が温度も湿度も高かったということ。
これならば湯船から出ても温度差は少なく、湯冷めをしにくいですね。
脱衣所に出る前に水を浴びれば、皮膚が締まって熱が逃げにくくなるので万全です。

逆に今より寒かったのはその後。
なにせ風呂屋から自宅まで外を歩いて帰るんですから。
夏真っ盛り以外は冷えるのは自明のこと。
だからこそお風呂から出た後は半纏などを着てしっかり防寒していたみたいです。

今の住宅事情ですと、お風呂から出ても家の中だからと言って油断しがちです。
お風呂上りに薄着でいたら風邪をひいた、なんてことを患者さんから聞いたことも何回か。
家の中で空調がしっかりしていれば湯冷めはしない、と油断してしまうんですね。
しかし前回書いたように、お風呂に入ればどうしても気化熱で冷えてしまいます。
どちらにせよ冷えるなら防寒している昔の方が身体への負担は少なかったはずです。

風はさらなる湯冷めの元!

逆に今の方が良いこともあります。
それは比べるまでもないくらい隙間風が少ないこと。
濡れて(湿って)いるところに風が当たると、気化が促進され一層熱が奪われるようになります。
もちろん『養生訓』にも入浴するときは風にあたらないよう注意するように書いてあります。

せっかく建築技術の進歩で隙間風がなくなったのに、自分から冷えたら意味がありません。
風呂上りに火照るからといって、窓や扇風機の前で風に当たったりしていませんか?
夏場ならばまだしも、これからの時期は入浴後の風をできるだけ避けるのが養生のコツです。
お風呂に入ったのに冷えたらもったいないですからね!