鍼灸治療では文字通り鍼(はり)を使います。
裁縫に使う針と同じ“はり”という読みですが、実物は意外と違うものです。
と言うのも、鍼にはかなりの種類があるためです。
その中でも今回は針とは違って刺さない鍼をご紹介します。

絶対に刺さらない鍼


写真の鍼は鍉鍼(ていしん)という鍼です。
一般的に想像する”はり”とはだいぶ違いますが、中国古典にも載っている伝統的な鍼の1つです。
見ての通り先端が尖っていないので、絶対に刺さることはありません。
当院では、例えば妊婦さんや子どもなど敏感な状態の患者さんに治療する際にはこの鍼を使います。
他にも患者さんの状態に合わせて必要な時には積極的に使っています。

刺さらないのに刺さってる感触!?

この鍉鍼は刺さらないため、ツボにあてるだけという使い方をします。
それならば本来は皮膚表面に鍼があたっている感触しかしないはずです。
しかしなぜか不思議な感触を感じる患者さんが多いようです。
「太い鍼が刺さっているような感じがします」「熱いです。お灸ですか?」「鍼があたってる場所がジワーっとします」「鍼があたってからお腹が温かくなりました」などなど。

実はこの感触が結構大事なのです。
鍼がツボにあたっているだけではない、いわゆる「気」による刺激になっている証拠だからです。
刺さらない鍼をツボにあてるだけならば、普通に考えればマッサージのような効果しか想定できません。
しかし、東洋医学で目指すのは鍼とツボの物理的な接触にはとどまらない部分です。
それが「気」を通じて生命力にアプローチするということになるのです。

刺さないからこその全身治療!

生命力にアプローチをできると、鍼のあたっている部分に限らず全身に影響が行きます。
鍉鍼でそれが一番わかりやすいのは妊婦さん。
例えば妊婦さんの足のツボに鍉鍼をあてると、時に目で見てわかるほど赤ちゃんが元気に動きます。
神経など物理的な理論、内分泌などの化学的な理論ではとても説明しきれない現象です。

このように刺さらない鍼でも全身に大きな影響を与えることができます。
だからこそ、西洋医学を始めとする物理・化学的な刺激で埒が明かない症状にも効果が出るのです。
なかなか治らない症状で悩んでいる方には是非体験してもらいたいと思います。