その症状、本当はいつから?

鍼灸の流派関係なく「治るために必要な期間は、発症してからの時間に比例する」と言われます。
様々な症状は身体のバランスが崩れることで起こりますが、長時間に及べば身体が悪い意味で崩れたバランスに慣れていってしまいます。
もちろん時間が経つことでバランス崩れが大きくなることも多々あります。
結果として正常なバランスに戻すのが難しくなるため、治療期間も必要になってくるのです。

ここまでは鍼灸院で患者さんに説明してわかってもらえるところです。
では発症してからというのは一体どのタイミングを指すのかわかりますか?
例えば腰痛で来院した患者さんならば発症は「腰が痛くなった時」と言うでしょう。
他にも「発熱した時」「赤ちゃんの位置が変わって逆児になった時」など、訴える症状が最初に現れた時を発症のタイミングだと思いがちです。
ここが勘違いしやすい部分なのです。

局所の症状を見れば、確かに発症のタイミングは上記の通りです。
しかし良く考えてみると、外傷以外で突然に症状が現れることは滅多にありません。
先程の例えを続ければ「腰が痛くなる前から腰回りが冷たくなっていた」「発熱する前からしばらく咳が出ていた」「妊娠する前から生理痛がひどかった」などの場合が考えられます。
もっと視野を広げると、「疲れ」や「冷え」などが本格的な症状の前に現れていたことに気づくはずです。

ではなぜ視野を広げるかと言うと、生命力の低下という点に着目して考えるからです。
身体に起こる異状はすべて、生命力の低下による一連の症状の一部と言えます。
全ての異状の中で一番最初に現れたもの、つまり「疲れ」や「冷え」など一見ささやかな異状が、生命力の低下が表に出てきたことによる最初の発症となるのです。

回一堂鍼灸院で行っている積聚治療ではこの点を重視しています。
そこで初診の際には症状がいつからかを訊きますし、過去に他の症状があったかも尋ねます。
またこの考え方をすると、訴えていた症状が消えても他の異状がある場合は油断できないことがわかります。
自分の本当の発症タイミングを振り返り、治療計画や生活改善の参考にしてみてください!